『戦火の馬』スティーブン・スピルバーグ

戦火の馬 (字幕版)

監督:スティーブン・スピルバーグ
原題:War Horse
原作:マイケル・モーパーゴ『戦火の馬』
2011年 アメリカ 146分

スティーブン・スピルバーグ『戦火の馬』を鑑賞。克明な戦争描写の一方で、死や流血の瞬間は一切映り込まず、馬の演技もファンタジック。こういう「過酷な現実」と「ジュブナイル的な空想」の奇妙な融合は、スピルバーグ映画の魅力を本質を成すものであり、そういう意味では極めてスピルバーグ映画的な作品。
イングランド農家の少年と心を通わせていた馬のジョーイが、大戦勃発後、軍馬としてイギリス軍に売られ、戦いの混乱の中で様々な人間に乗り継がれてく、その遍歴を描いているのだが、次々と移り変わる場面(イギリス軍→ドイツ軍→フランスの農村→ドイツ軍→ソンムの塹壕戦)がそれぞれに独立した物語としての色を持っており、ともすれば散漫な印象を与えかねないところを、全編を貫く丁寧なモチーフの展開と、カミンスキー撮影の宝石のように美しい映像が、見事に作品を纏め上げ、鑑賞者を最後まで導いてくれる。