『6才のボクが、大人になるまで。』リチャード・リンクレイター

6才のボクが、大人になるまで。(字幕版)

監督:リチャード・リンクレイター
原題:Boyhood
2014年 アメリカ 166分

リチャード・リンクレイター6才のボクが、大人になるまで。』を鑑賞。ある少年が6才から18才になるまでの12年間を、実際に同様の年月かけて撮影している奇作。トリュフォーのアントワーヌシリーズを想起するが、この作品の場合「一本の映画」の中に12年もの歳月が圧縮されているのであり、役者が容赦なく加齢していくそのリアリズムには迫力を感じる。ドラマツルギーに侵されることなく、意味の有ったり無かったりする断片の連続によって紡がれる映像は、一貫して静謐な雰囲気。主役の少年は「アート写真」に傾倒しており、それをフックに鑑賞者の意識はこの物語の形式そのものへと向かうことになる。ここで行われていることは「人生=時間」の異化であり、不測の事態に見舞われることもなく撮影が終了したことへの感慨は、そのまま現実の人生に転写される。
なお「個人の記憶は社会の記憶でもある」ということが実感できる作りになっており、オバマが2014年のベスト映画に選んでいたのは然もありなん。