映画

『ルーム』レニー・エイブラハムソン

エイブラハムソン『ルーム』鑑賞。見知らぬ男に7年ものあいだ納屋(ルーム)へ監禁されていた女性が、そこで生まれ育った5歳の息子とともに、脱出に成功するものの、次は外の世界という精神的牢獄(ルーム)に閉じ込められることとなり……という物語。 カメラ…

『ロシアン・スナイパー』セルゲイ・モクリツキー

モクリツキー『ロシアン・スナイパー』鑑賞。いわゆる旧ソ連女性兵士もの。伝説的女性狙撃手を主役に、オデッサの戦いとセヴァストポリの戦いが描かれる。狙撃戦描写のクオリティが高く、オデッサ撤退時の空中戦等もVFXを駆使した迫力ある映像に仕上がってい…

『スリ〈掏摸〉』ロベール・ブレッソン

ブレッソン『スリ』鑑賞。『罪と罰』映画版といった趣で、貧しい青年が超人思想に基づいてスリに手を染めるも、社会的制裁を加えられ、無垢な女性によって魂を救済される…という筋書なのだが、『罪と罰』の真の主役がそのハイテンションな記法であり、物語の…

『6才のボクが、大人になるまで。』リチャード・リンクレイター

リンクレイター『6才のボクが、大人になるまで。』鑑賞。ある少年が6才から18才になるまでの12年間を、同年月かけて撮影している奇作。トリュフォーのアントワーヌシリーズを想起するが、この作品の場合「一本の映画」の中に12年もの歳月が圧縮されているの…

『ミスト』フランク・ダラボン

フランク・ダラボン『ミスト』を久々に再鑑賞。やはり傑作だと思う。特徴的なカメラワーク(基本的にドキュメンタリー調で後半はスローモーションやクレーンショット等の映画的なタッチが増えていく)やクリーチャーのラヴクラフト的造形にも臭みが無く、先…

『トイ・ストーリー3』リー・アンクリッチ

ピクサー映画『トイ・ストーリー3』鑑賞。聞きしに勝る傑作だった。既に呆気に取られるほどの高みに到達しているCG表現でもって、ありとあらゆるアクション&パロディが繰り広げられる。素直な明るさと楽しさがあり、それでいてゾッとするような深淵がある…

『パフューム ある人殺しの物語』トム・ティクヴァ

トム・ティクヴァ『パフュームある人殺しの物語』鑑賞。ジュースキントの原作『香水』が好きなので、不安を抱えつつ鑑賞してみたのだが、悪くなかった。主人公のグルヌイユが去ると、関わった人間達は原作通りの速やかさで(残り香の如く)きちんと消滅して…

『雪の轍』ヌリ・ビルゲ・ジェイラン

ジェイラン『雪の轍』鑑賞。イスタンブールを「彼方」として抱き、カッパドキアのホテルを舞台として繰り広げられる会話劇。経営者で資産家の男性を主役に、慈善事業にのめり込む若妻、離婚して出戻ってきた妹、使用人、賃借人一家など、様々な階級・職業の…

『ズートピア』バイロン・ハワード&リッチ・ムーア

ディズニー映画『ズートピア』鑑賞。これは凄い。「擬人化された動物」という設定が、ここまでの必然性/迫真性を帯びている例は、ちょっと他に無いのではないか。 本作に登場する擬人化動物たちは、時に擬人化への疑問を呈し、時に擬人化を解除され、それで…

『戦火の馬』スティーブン・スピルバーグ

スピルバーグ『戦火の馬』を鑑賞。克明な戦争描写の一方で、死や流血の瞬間は一切映り込まず、馬の演技もファンタジック。こういう「過酷な現実」と「ジュブナイル的な空想」の奇妙な融合は、スピルバーグ映画の魅力を本質を成すものであり、そういう意味で…

みんな、ヘン。そして素晴らしき世界。『ファインディング・ニモ』鑑賞:見える/見えないのリズムに浮かび上がる多種多様な形態と色彩

監督:アンドリュー・スタントン&リー・アンクリッチ原題:Finding Nemo2003年 アメリカ 100分 見えることと見えないことのリズムが生み出す映像のドラマはいつも美しい。狭い場所から開けた場所へと画面が移動することで訪れるカタルシス。闇に沈む空間に…

フェミニズム映画、ではない。『かぐや姫の物語』鑑賞:アニメーションの欺瞞――ヴェール、表象、運動と静止

ゾートロープというものがある。静止した絵を動いているように見せるための装置の一種で、いわゆる回転覗き絵である。等間隔にスリットの開いた円筒の内側に、連続した動作の絵が貼ってあり、この円筒をくるくる回すと、スリットとスリットの間の闇がシャッ…