『パフューム ある人殺しの物語』トム・ティクヴァ

パフューム ある人殺しの物語 (字幕版)

監督:トム・ティクヴァ
英題:Perfume: The Story of a Murderer
原作:パトリック・ジュースキント『香水 ある人殺しの物語』
2006年 ドイツ/フランス/スペイン 147分

トム・ティクヴァパフューム ある人殺しの物語』を鑑賞。ジュースキントの原作『香水』が好きなので、不安を抱えつつの鑑賞だったのだが、悪くなかった。主人公グルヌイユに関わった人間達は、彼が去ると、原作通りの速やかさで(残り香の如く)きちんと消滅していくし、彼の驚異的な嗅覚はモンタージュ・360℃パン・空撮等によって適切かつ映画的に表現されている。調香師バルディーニが橋の上に構える店舗のいかにもな外観造形や、暗灰色の中に浮かび上がる薔薇の赤といった、印象に残る画も多い。
問題はナレーションである。原作は「語る」小説なので、その印象を写し取りたかったのだろうけども、映像で十分に描写されたことを再び説明するのには、ちょっと辟易してしまった。同じ文芸原作/18世紀ものならば、キューブリックバリー・リンドン』などは、ナレーションが良い仕事をしていたように思うのだが。
とはいえ、話はやはり面白いし、脚本は過不足無く、音楽は美しく、役者陣も魅力的(特にベン・ウィショーダスティン・ホフマンアラン・リックマン)で、十分楽しめた。
それにしてもグルヌイユの非人間ぶりは身につまされる。