『雪の轍』ヌリ・ビルゲ・ジェイラン

雪の轍(字幕版)

監督:ヌリ・ビルゲ・ジェイラン
英題:Winter Sleep
2014年 トルコ 196分

ヌリ・ビルゲ・ジェイラン『雪の轍』を鑑賞。イスタンブールを「彼方」として抱き、カッパドキアのホテルを舞台として繰り広げられる会話劇。経営者で資産家の男性を主役に、慈善事業にのめり込む若妻、離婚して出戻ってきた妹、使用人、賃借人一家など、様々な階級・職業の人物が画面に立ち現れては言葉を交わす。
カッパドキアの美しい景色と、洞窟のような薄暗い室内空間のコントラストが美しい。演劇的で閉じられた作品空間は、冬になると観光客も居なくなり、ますます閉塞感を増していく。人々は言葉によって隔てられ、移動手段である車は常に不具合に晒されている。野生動物とカメラワークだけが自由である。
ロシア文学チェーホフドストエフスキートルストイ…)やシェイクスピア等からの引用を駆使した緊張度の高いダイアローグで紡がれる物語が、イスタンブールへの移住を諦めた主人公のモノローグで終幕するのには痺れた。シューベルトのピアノ・ソナタは少し浮いている気がしなくもない。